この映画のストーリーは、実在したSolomon Northup(ソロモン・ノーズアップ)という一人の黒人男性の話に基づいており、彼自身が執筆した自伝をベースにしている。
ところがある日、2人の白人男性からワシントンD.C.のサーカスに誘われ、ソロモンは彼らと一緒に同行した。和気あいあいと夜の食事を楽しんでいたが、ソロモンが翌朝目覚めた際には、小屋の中でチェーンが繋がれた状態だった。
ソロモンは2人の男に泥酔させられ、奴隷の人身売買の為に誘拐されたのだった。彼は他の人身売買で奴隷として売られてしまう黒人達と共に、船によってアメリカ南部ニューオーリンズに運ばれ、近隣州のジョージアから逃げた奴隷というアイデンティティと”Platt(プラット)”という名前を押し付けられる。
こうして、彼のとてつもなく長く、そして過酷且つ壮絶な奴隷としての日々が始まってしまったのだった…
映画の大部分はソロモンが奴隷としてアメリカ南部で過ごした12年間を描いているが、その部分はこのブログでは略すことにする。
12年間の奴隷としての生活を経て、ソロモンは幸いにも自由の身に戻ることができるが、彼が奴隷売買の根絶に精力し、自伝を執筆した後のその後の人生や死などについては知られていない。
評判通り、非常に良い映画だとは思うが、お勧めするのは少しはばかられる。
評判通り、非常に良い映画だとは思うが、お勧めするのは少しはばかられる。
というのも、ソロモンが歩んだ12年間の中で起こったこと等の描写が、すごくリアルで、見ているのが心苦しいというか、胸が苦しくなるというか、胸が締め付けられるというか、心に“ずしん”と重りをのっけられた気分になるのだ。
見ているのが決して目にも心にも優しくない。私が大好きなアメリカで、こんな非道で残酷なことが普通に行われていたかと思うと、吐き気がしてくるくらいだ。
どうやったら、人間が同じ人間にこのようなことができるのか。肌の色が異なるだけで、何故虫ケラ以下のような扱いができてしまうのか。心が痛まなかった白人はいないのか。何故こんなことが罷(まか)り通っていたのか。
人類最大の罪とも言える、奴隷制度について、本当に考えさせられる作品だ。
一方で、キャストの演技は非常に素晴らしく、見物である。
主人公Solomon Northup(ソロモン・ノーズアップ)を演じるのはイギリス出身の俳優Chiwitel
Ejiofor(キウェテル・イジョフォー)。彼はこれまでも出演作は多いものの、本作が彼の代表作の一つ、あるいは出世作になることは必至だろう。
ソロモンが最も長い間を過ごしたプランテーションのオーナーEdwin
Epps(エドウィン・エップス)役のドイツ人俳優Michael Fassbender(マイケル・ファスベンダー)もハマり役で見事だった。彼は2008年のイギリス映画『Hunger(邦題:ハンガー)』とセックス依存症を描いて話題になった2011年の映画『Shame(邦題:SHAME
-シェイム-)』で本作のイギリス人監督Steve McQueen(スティーブ・マックィーン)とタッグを組んでいる。(かなりの余談だが、マイケルがデビット・ベッカムに似ていると思うのは私だけだろうか。)
ソロモンが最初に奴隷として売られていったプランテーションのオーナーWilliam
Ford(ウィリアム・フォード)役 のイギリス人俳優Benedict
Cumberbatch(ベネディクト・カンバーバッチ)もさすがの名脇役、出演時間こそ短いが、紳士で心優しい主(あるじ)の役をそつなく演じている。
フォード氏の元で働く大工のJohn Tibeats(ジョン・ティビーツ)は『Prisoners(邦題:未定)』でも名演技を披露したばかりで注目度の高いPaul Dano(ポール・ダノ)。
フォード氏の元で働く大工のJohn Tibeats(ジョン・ティビーツ)は『Prisoners(邦題:未定)』でも名演技を披露したばかりで注目度の高いPaul Dano(ポール・ダノ)。
そして、本作がアメリカ映画デビューとなるケニア人女優のLupita Nyong'o(ルピタ・ニョンゴ)は、ソロモンと一緒のプランテーションで奴隷として働くPatsey(パッツィ)という女の子を果敢に演じた。
邦題も12月12日に決まり、日本公開が2014年3月7日に決定したので、観に行こうと思う方は、是非心の準備をして観に行ってきていただきたい。