Thursday, July 25, 2013

A Beautiful Mind (邦題:ビューティフル・マインド )



2002年度のアカデミー賞でいくつもの部門でノミネートされ、作品賞、監督賞、助演女優賞、脚色賞の4つの部門で受賞をした『A Beautiful Mind(邦題:ビューティフル・マインド )』は2001年のアメリカ映画である。非常に有名な映画であるため、既に観た方も多いのではないだろうか。



本フィルムは実在するノーベル経済学賞受賞の 天才数学者、ジョン・ナッシュの半生を描いている。

時代は1947年、ジョン・ナッシュが超名門プリンストン大学院の数学科に入学するところからストーリーが始まる。彼は「この世の全てを支配できる理論を見つけ出したい」という願いを果たすため、一人研究に没頭していくのだった。ライバルが先に成果をあげたことが彼の必死さに拍車をかけ、追い込まれながらも更に研究に没頭をしていく。そんな彼の研究は、ある夜バーに友人たちと出掛けた先でひょんなきっかけから独自性のあるアイデアが浮かび上がり、ついに実を結ぶことになる。それが、今や世界中が知っている「ゲーム理論」という画期的な理論の発見であった。


その類いまれな頭脳を認められたジョンは、やがて超名門MIT(マサチューセッツ工科大学)のウィーラー研究所に採用され、そこで教師と教え子として出会ったアリシアと結婚する。しかし、ちょうどこの頃に 彼の頭脳に目をつけた軍が、敵国の暗号解読を彼に強要してくるのだった。その極秘任務の重圧に彼の精神は次第に追い詰められていき、ついに重い統合失調症になってしまう。その病が引き起こす酷い幻覚や幻聴に悩まされながらも、彼は妻と共に懸命に生きていく。

どこまでが現実世界で起こっていることで、どこからが幻覚の世界なのか。


天才は天才なりの孤独な闘いがあり、苦労があり、辛さがあるのだろう、そんなことを感じさせる映画である。少し奇妙で、少し怖く、そして少し悲しく切ない映画ではあるが、ジョンが必死に生きる姿、ジョンとアリシアの夫婦愛、そして二人が困難を乗り越えて行く姿にはじんとくる。

完全に実話に基づいているわけではないみたいだが、それでも天才ジョン・ナッシュの苦悩をできるだけ忠実に描いており、彼に寄り添うような気持ちで観てしまう映画だ。


ラッセル・クロウは大好きな俳優ではないが、本作の彼は非常に魅力的であった。ラッセル・クロウ自身とは全く異なる人生を生きているジョン・ナッシュ、性格的にもかなり異なるであろうジョンの役と人物像を、話を聞いたり本の原作を読んだりしながら想像して、あのように仕上げたのかと思うと感嘆のため息がでる。

ジョンのプリンストン時代のライバルであるハンセン役を演じるジョシュ・ルーカスは最もハマり役であった。彼はいかにもIVY Leagueの学生という感じのイメージだ。

ジョン・ナッシュの妻、アリシア・ナッシュを演じるジェニファー・コネリーは、本作品でアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞の両方にて助演女優賞を受賞している。彼女も、これまで女優として素晴らしい演技をすると思ったことはなかったが、ジョンの妻であるアリシアの難役を演じきったと思う。


ジェニファー・コネリーはヨーロッパ系の血がいくつも混ざった混血で、独特な美しさがあるが、何より光るのが知性だ。学業と仕事のバランスを取ることができず、卒業こそしていないものの、イェール大学で2年間学び、その後スタンフォードに転入して演劇を学んでいる。そして語学も堪能である。


私の大好きな映画の一つである『The Blood Diamond(邦題:ブラッド・ダイヤモンド)』ではマディー役でのカッコいい女性ジャーナリストを演じている。セクシー系ではなものの、知的なセクシーさがある女優だ。

本映画で出会った、ジョンのプリンストン時代のルームメイトであるチャールズ役のポール・ベタニーと結婚し、子供をもうけている。


ロン・ハワード監督はこのフィルムの後でも、2006年の『The Da Vinci Code(邦題:ダ・ヴィンチ・コード)』を大ビットさせ、脚光を浴びた。

これは後で知ったのだが、ロン・ハワード監督はすごく昔(1973)American Graffiti(邦題:アメリカン・グラフィティ)』にアクターとして出演していたようだ。アメリカン・グラフィティは1年ほど前にもう一度見直していたのだが、全く気付かなかった。本フィルムはじめ、監督として非常に有名だが、彼が役者だったことを今の若い世代は知っているのだろうか?


Friday, July 19, 2013

Fruitvale Station(邦題:フルートベール駅で )


サンダンスフィルムフェスティバルで数々の賞を受賞した『Fruitvale Station(邦題:フルートベール駅で)』。米国で712日に公開になったばかりのインディペンデントフィルムである。



本フィルムは、20081231日〜200911日のNew Year’s Eveに起こった悲劇的な事件をベースに制作されたものである。

いま、色んな意味で、全米での注目を浴びている本作品。その理由はいくつかある。

1. まず、監督が若干27歳の映画界の新星であり、彼の本作品がサンダンス映画祭で大注目を浴びたこと。

2. 今年スクリーニングされたのインディペンデント映画の中で、今現在、最も称賛を浴びていること。

3. 実話に基づいた話であり、事件当日の状況や現場がリアルに再現されていること。この事件自体がアメリカ社会を騒がせ、大きな論争や抗議(デモ)が起こった事件であること。

4. この事件とは関係ないが、似たような事件で全米が注目していた裁判『State of Florida(フロリダ州) vs. George Zimmerman(ジョージ・ジマーマン)』の判決がつい先日7/13に下り、10代の黒人少年を殺害した 29歳のヒスパニック系白人男性が無罪となった。この陪審員判決を受けて、今もなお米国各地でデモが起こっており、非常にタイムリーであること。
事件に関する日本語記事: http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2013/07/post-575.php 

5. そして、なにより米国において、未だに人種差別が根強く残っており、白人が黒人を殺害し、短い(軽い)刑あるいは無罪放免となる事件、そして同じような判決が繰り返され、注目を浴びるのだという証明でもある。



映画のベースとなっている事件とは、こういう事件だ。

カリフォルニア州のオークランドで、2009年の新年を迎えたばかり。BARTという電車の中で 22歳のOscar Grant(オスカー・グラント)という青年が、チンピラ達に絡まれ、騒動を起こし、電話に乗っていた乗客からの通報で駆けつけた警察官によって最寄りのFruitvale Station(フルーツヴェル駅)にて下車させられてしまう。

ホーム上でオスカーと彼の仲間達は事情聴取されるのを抵抗するが、ホームで警察官達に取り押さえられる。オスカーは下を向いてうつ伏せになれ、と命令され、手錠をかけられようとするが、それに対して抵抗をしようとした矢先、オスカーを押さえつけていた警察官が突然前触れもなくオスカーの背中に向け、銃を発砲したのだ。

オスカーは救急車によって運ばれ、緊急手術を受けるが、医者達の努力も虚しく、そしてオスカーの母親や仲間、共に一児の女の子をもうけた未婚のパートナーの祈りも虚しく、オスカーは早朝に息絶えてしまう。

目撃者は多数おり、オスカー達が電車から下車し、オスカーが発砲されるまでの経緯を携帯電話などで捉えた複数の映像が世間に出回ることになる。
警官は間違えて発砲してしまったと釈明した。

裁判の後、発砲し、オスカーを殺害した警察官に科せられた刑期はたったの2年。その上、保護観察処分のもと、結果的には11ヶ月にて刑務所を出所するのである。

果たしてjustice(正義、公平さ)とは。


映画では、大晦日の日からの彼の日常生活をフォローし、彼の人柄や事件当日の行動や事件の場面を観ることができる。目撃した人から提供された 実際の映像も取り入れている。



殺されてしまった青年Oscar Grant(オスカー・グラント)役を演じるのは、Michael B. Jordan(マイケル B. ジョーダン)。そしてオスカーの母親役はアカデミー賞助演女優賞を受賞したOctavia Spencer(オクタヴィア・スペンサー)が演じている。

また、『The Help(邦題:ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜)』でオクタヴィア・スペンサーと共演をしたAhna O'Reilly(アーナ・オライリー)も本作品に脇役として出演している。彼女は人気俳優のJames Franco(ジェームズ・フランコ)が5年間付き合っていた相手としても有名である。



オスカーの恋人Sophina(ソフィーナ)役は、数々のインディペンデントフィルムに出演しているMelonie Diaz(メロニー・ディアス)が演じており、本作品でも非常に熱演している。


個人的には観て良かったと思う映画ではあったものの、正直、映画としては何故これまで高い評価を得ているのかは謎ではある。

しかし、間違いなく言えるのは、ストーリーは実話に基づいているだけあって、非常に見応えがあり、感情も揺さぶられる映画だということだ。




ちなみに余談であるが、前述した『State of Florida(フロリダ州) vs. George Zimmerman(ジョージ・ジマーマン)』の判決を受け、主演のマイケル B. ジョーダンは本フィルムのプレスイベントを怒りのあまり、あわや中止するという事態もおこった。しかし、こういう事件や判決があるからこそ、この映画がいかに重要な意味を持つかということを再認識し、イベントに出席をした。


Monday, July 15, 2013

Pacific Rim(邦題:パシフィック・リム )


Pacific Rim(邦題:パシフィック・リム)』は712日にアメリカで公開されたばかり、日本では来月89日に劇場公開されるSF怪獣映画。


この映画は、(私の友人曰く) ひとことで言えば、 ゴジラ対メカゴジラの闘いである。

舞台は2020年代。太平洋から突如現われ、世界各国の主要都市が次々と攻撃していく巨大怪獣”Kaiju”たち。世界滅亡の危機に瀕した人類は、最終手段としてパイロットと神経を接続して動く2人乗りの巨大ロボット"イェーガー/Jaegers"を開発し、稼働させる。

それぞれに残酷な体験をした過去を持ち、苦しみの中で行きてきたパイロット二人が世界を救うべく、怪獣たちに立ち向かっていくのである。


“Kaiju”は言うまでもなく、「怪獣」を元に作られているが、別に日本の怪獣が敵だというわけではない。ギレルモ・デル・トロ監督は「日本の漫画、ロボット、怪獣映画の伝統を尊重している」とインタビューでも答えており、誤解されないことを願っている。


本来、SF映画や人間以外の闘いを描いた作品は苦手なのだが、この作品への期待値が非常に低かったからというのもあるかもしれないが、予想以上に楽しんで観ることができた。パイロット達の過去や登場人物の関係性といったストーリー面の面白さ、映像とスペシャルエフェクト/特殊効果の美しさ、スケールの大きさとダイナミックさ、そしてロボットは人間に外から操縦されるだけではなく、中に実際に心の通った生身の人間が入って操縦している異色さがこのフィルムの醍醐味である。

最初から最後まで全体的に、映画というよりも、2時間強のアトラクション的な感覚で観ることのできる作品だ。

本フィルムで主人公パイロットのラリー・ベケット役を演じるのは、映画ではまだこれといった代表作がないが、『Sons of Anarchy(邦題:サンオブアナーキー)』という米ドラマで全米では知名度の高いCharlie Hunnam(チャーリー・ハナム)である。

その脇を固めているのが、ベテラン俳優二人、Idris Elba(イドリス・エルバ)と、デル・トロ監督の代表作である『Hellboy(邦題:ヘルボーイ)』で主演を務めたRon Perlman(ロン・パールマン)である。この二人がそれぞれに非常にいい味を出している。

闘いに頭脳の面で支援する二人の博士を演じるCharlie Day(チャーリー・デイ)とBurn Gorman(バーン・ゴーマン)の演技も必見だ。シリアスな闘いが繰り広げられて行く中で、ユーモアと笑いを提供してくれる。

日本では、菊地凛子がルーキーパイロットとして準主演をつとめ、今回ハリウッドでビューとなる芦田愛菜が菊地凛子の幼少時代をつとめることでもきっと話題になっていることだろう。実際に彼女達は、この映画の中で大きな役を担っている。


日本での公開まで1ヶ月弱。
日本が生み出した怪獣という文化が物語のコアとなり、そして日本人女優二人が熱演する本作品。是非劇場に足を運んで、3Dでそのダイナミックさを体験していただきたい。


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