2002年度のアカデミー賞でいくつもの部門でノミネートされ、作品賞、監督賞、助演女優賞、脚色賞の4つの部門で受賞をした『A
Beautiful Mind(邦題:ビューティフル・マインド )』は2001年のアメリカ映画である。非常に有名な映画であるため、既に観た方も多いのではないだろうか。
本フィルムは実在するノーベル経済学賞受賞の 天才数学者、ジョン・ナッシュの半生を描いている。
時代は1947年、ジョン・ナッシュが超名門プリンストン大学院の数学科に入学するところからストーリーが始まる。彼は「この世の全てを支配できる理論を見つけ出したい」という願いを果たすため、一人研究に没頭していくのだった。ライバルが先に成果をあげたことが彼の必死さに拍車をかけ、追い込まれながらも更に研究に没頭をしていく。そんな彼の研究は、ある夜バーに友人たちと出掛けた先でひょんなきっかけから独自性のあるアイデアが浮かび上がり、ついに実を結ぶことになる。それが、今や世界中が知っている「ゲーム理論」という画期的な理論の発見であった。
その類いまれな頭脳を認められたジョンは、やがて超名門MIT(マサチューセッツ工科大学)のウィーラー研究所に採用され、そこで教師と教え子として出会ったアリシアと結婚する。しかし、ちょうどこの頃に 彼の頭脳に目をつけた軍が、敵国の暗号解読を彼に強要してくるのだった。その極秘任務の重圧に彼の精神は次第に追い詰められていき、ついに重い統合失調症になってしまう。その病が引き起こす酷い幻覚や幻聴に悩まされながらも、彼は妻と共に懸命に生きていく。
どこまでが現実世界で起こっていることで、どこからが幻覚の世界なのか。
天才は天才なりの孤独な闘いがあり、苦労があり、辛さがあるのだろう、そんなことを感じさせる映画である。少し奇妙で、少し怖く、そして少し悲しく切ない映画ではあるが、ジョンが必死に生きる姿、ジョンとアリシアの夫婦愛、そして二人が困難を乗り越えて行く姿にはじんとくる。
完全に実話に基づいているわけではないみたいだが、それでも天才ジョン・ナッシュの苦悩をできるだけ忠実に描いており、彼に寄り添うような気持ちで観てしまう映画だ。
ラッセル・クロウは大好きな俳優ではないが、本作の彼は非常に魅力的であった。ラッセル・クロウ自身とは全く異なる人生を生きているジョン・ナッシュ、性格的にもかなり異なるであろうジョンの役と人物像を、話を聞いたり本の原作を読んだりしながら想像して、あのように仕上げたのかと思うと感嘆のため息がでる。
ジョンのプリンストン時代のライバルであるハンセン役を演じるジョシュ・ルーカスは最もハマり役であった。彼はいかにもIVY
Leagueの学生という感じのイメージだ。
ジョン・ナッシュの妻、アリシア・ナッシュを演じるジェニファー・コネリーは、本作品でアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞の両方にて助演女優賞を受賞している。彼女も、これまで女優として素晴らしい演技をすると思ったことはなかったが、ジョンの妻であるアリシアの難役を演じきったと思う。
ジェニファー・コネリーはヨーロッパ系の血がいくつも混ざった混血で、独特な美しさがあるが、何より光るのが知性だ。学業と仕事のバランスを取ることができず、卒業こそしていないものの、イェール大学で2年間学び、その後スタンフォードに転入して演劇を学んでいる。そして語学も堪能である。
私の大好きな映画の一つである『The Blood Diamond(邦題:ブラッド・ダイヤモンド)』ではマディー役でのカッコいい女性ジャーナリストを演じている。セクシー系ではなものの、知的なセクシーさがある女優だ。
本映画で出会った、ジョンのプリンストン時代のルームメイトであるチャールズ役のポール・ベタニーと結婚し、子供をもうけている。
ロン・ハワード監督はこのフィルムの後でも、2006年の『The Da Vinci Code(邦題:ダ・ヴィンチ・コード)』を大ビットさせ、脚光を浴びた。
これは後で知ったのだが、ロン・ハワード監督はすごく昔(1973年)『American Graffiti(邦題:アメリカン・グラフィティ)』にアクターとして出演していたようだ。アメリカン・グラフィティは1年ほど前にもう一度見直していたのだが、全く気付かなかった。本フィルムはじめ、監督として非常に有名だが、彼が役者だったことを今の若い世代は知っているのだろうか?