サンダンスフィルムフェスティバルで数々の賞を受賞した『Fruitvale Station(邦題:フルートベール駅で)』。米国で7月12日に公開になったばかりのインディペンデントフィルムである。
本フィルムは、2008年12月31日〜2009年1月1日のNew
Year’s Eveに起こった悲劇的な事件をベースに制作されたものである。
いま、色んな意味で、全米での注目を浴びている本作品。その理由はいくつかある。
1. まず、監督が若干27歳の映画界の新星であり、彼の本作品がサンダンス映画祭で大注目を浴びたこと。
2. 今年スクリーニングされたのインディペンデント映画の中で、今現在、最も称賛を浴びていること。
3. 実話に基づいた話であり、事件当日の状況や現場がリアルに再現されていること。この事件自体がアメリカ社会を騒がせ、大きな論争や抗議(デモ)が起こった事件であること。
4. この事件とは関係ないが、似たような事件で全米が注目していた裁判『State of Florida(フロリダ州)
vs. George Zimmerman(ジョージ・ジマーマン)』の判決がつい先日7/13に下り、10代の黒人少年を殺害した
29歳のヒスパニック系白人男性が無罪となった。この陪審員判決を受けて、今もなお米国各地でデモが起こっており、非常にタイムリーであること。
5. そして、なにより米国において、未だに人種差別が根強く残っており、白人が黒人を殺害し、短い(軽い)刑あるいは無罪放免となる事件、そして同じような判決が繰り返され、注目を浴びるのだという証明でもある。
映画のベースとなっている事件とは、こういう事件だ。
カリフォルニア州のオークランドで、2009年の新年を迎えたばかり。BARTという電車の中で 22歳のOscar Grant(オスカー・グラント)という青年が、チンピラ達に絡まれ、騒動を起こし、電話に乗っていた乗客からの通報で駆けつけた警察官によって最寄りのFruitvale
Station(フルーツヴェル駅)にて下車させられてしまう。
ホーム上でオスカーと彼の仲間達は事情聴取されるのを抵抗するが、ホームで警察官達に取り押さえられる。オスカーは下を向いてうつ伏せになれ、と命令され、手錠をかけられようとするが、それに対して抵抗をしようとした矢先、オスカーを押さえつけていた警察官が突然前触れもなくオスカーの背中に向け、銃を発砲したのだ。
オスカーは救急車によって運ばれ、緊急手術を受けるが、医者達の努力も虚しく、そしてオスカーの母親や仲間、共に一児の女の子をもうけた未婚のパートナーの祈りも虚しく、オスカーは早朝に息絶えてしまう。
目撃者は多数おり、オスカー達が電車から下車し、オスカーが発砲されるまでの経緯を携帯電話などで捉えた複数の映像が世間に出回ることになる。
警官は間違えて発砲してしまったと釈明した。
裁判の後、発砲し、オスカーを殺害した警察官に科せられた刑期はたったの2年。その上、保護観察処分のもと、結果的には11ヶ月にて刑務所を出所するのである。
果たしてjustice(正義、公平さ)とは。
映画では、大晦日の日からの彼の日常生活をフォローし、彼の人柄や事件当日の行動や事件の場面を観ることができる。目撃した人から提供された 実際の映像も取り入れている。
殺されてしまった青年Oscar Grant(オスカー・グラント)役を演じるのは、Michael B. Jordan(マイケル B.
ジョーダン)。そしてオスカーの母親役はアカデミー賞助演女優賞を受賞したOctavia
Spencer(オクタヴィア・スペンサー)が演じている。
また、『The Help(邦題:ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜)』でオクタヴィア・スペンサーと共演をしたAhna
O'Reilly(アーナ・オライリー)も本作品に脇役として出演している。彼女は人気俳優のJames
Franco(ジェームズ・フランコ)が5年間付き合っていた相手としても有名である。
オスカーの恋人Sophina(ソフィーナ)役は、数々のインディペンデントフィルムに出演しているMelonie
Diaz(メロニー・ディアス)が演じており、本作品でも非常に熱演している。
個人的には観て良かったと思う映画ではあったものの、正直、映画としては何故これまで高い評価を得ているのかは謎ではある。
しかし、間違いなく言えるのは、ストーリーは実話に基づいているだけあって、非常に見応えがあり、感情も揺さぶられる映画だということだ。
ちなみに余談であるが、前述した『State of Florida(フロリダ州)
vs. George Zimmerman(ジョージ・ジマーマン)』の判決を受け、主演のマイケル B. ジョーダンは本フィルムのプレスイベントを怒りのあまり、あわや中止するという事態もおこった。しかし、こういう事件や判決があるからこそ、この映画がいかに重要な意味を持つかということを再認識し、イベントに出席をした。
No comments:
Post a Comment