『Looper(邦題:Looper/ルーパー)』は、2012年(第37回)トロント国際映画祭の オープニングナイト作品としてお披露目され、日本では2013年1月に公開されたSFアクションスリラーのフィルムである。
最初にトレーラーで観た時には、なんだかよく分からない映画だなーと感想を持ち、監督もよく知らない上に、キャスト以外あまり興味がそそられなかったので、きっと見ないで終わるだろうなーと思っていた。
しかし、主演のジョセフ=ゴードン・レヴィットが、脚本を読んで本作に夢中になり、すぐに出演を承諾したという噂を聞き、これは観てみる価値があるのではないか、と思い、とりあえず観てみることにした。
実際に観てみると、期待を遥かに超えたフィルムだった。
単純で分かりやすい映画が好きな私は、『Matrix(邦題:マトリックス)』や『Inception(邦題:インセプション)』などこの部類の映画は複雑すぎて 苦手なため、だいたい途中で注意がそれてしまうのだが、この映画は最初から最後までスクリーンに釘付けになって見ていた。
すごく簡単にサマリーすると、ブルース・ウィリスとジョセフ・ゴードン=レヴィットが同一人物を演じ、 現代の自分/ジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)と未来の自分/ジョー(ブルース・ウィリス)の戦いを描いた作品である。
とある犯罪組織が、証拠を残さずに敵を消し去ろうと、標的を30年前に送くるところからストーリーが始まる。そして、ある日、凄腕ルーパー(暗殺者)、ジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)の元に、ターゲットの抹殺指令が入る。いつも通りの単純な仕事のはずが、未来から送られてきた男は“30年後の自分”(ブルース・ウィリス)であったのだ。その驚愕の事実にためらいながらも 、「奴を殺さなければ、自分が消される!」という必死の思いで未来の自分を追跡する。そして、ようやく追い詰めたとき、“未来の自分”から、彼がここへ来た驚くべき理由が明かされる。その上で、現在のジョー、そして未来のジョーはどういう判断を下すのか…。
何回か観たり、ビデオならば巻き戻してみたりしなければ、完全に理解することが難しい複雑さはありながらも、常にはらはらさせられる展開、そしてストーリーもしっかりしていることから、ぐいぐい引き込まれる映画である。
通常、こういった手の映画は奇抜な視覚効果で観客を魅了するが、本フィルムはそれだけではない、ディープなストーリーが肝であり、観客を惹き付ける鍵となっている。時間軸や記憶にまつわる複雑なSF作品が近年増えつつあるが、そういった意味でも『Looper(邦題:Looper/ルーパー)』には斬新さがある。
アメリカの有力な映画評論サイトRotten Tomatoesでも 93%と非常に評価が高い。監督、脚本を務めたライアン・ジョンソンの腕ということなのだろう。個人的にはこれから是非注目したい監督、そして脚本家だ。
もう一つの見所と言えば、主演の2人が同一人物を演じるということで、ジョセフ・ゴードン=レヴィットがいかにブルース・ウィリスに似せることができているか、というところだ。顔(メイク)、仕草や話し方をモノにするために、ジョセフはウィリスの出演作を何度も繰り返し観たり、iPodでセリフ回しを聞きながら顔真似までしていたようだ。
似ているか否かは、コメントし難いが、とにかくメイクは不自然であったのは間違いない。
それにしても勢いが止まらないジョセフ・ゴードン=レヴィット。彼を初めて知ったのが、『500
Days of Summer(邦題:500日のサマー)』という映画だった。映画自体は大好きだったけれど、正直、これほどまでに大物になるとは思っていなかったからびっくりだ。
最後に、忘れてはならないのが、エミリー・ブラントの演技力の高さ。彼女は日本では恐らくアメリカほどの知名度はないと思うが、『The
Devil Wears Prada(邦題:プラダを着た悪魔)』でアン・ハサウェイをいじめる同僚といえば、ピンとくる方も多いのではないだろうか。彼女は『The Five-Year Engagement(邦題:憧れのウェディングベル)』等、ラブコメディをやらせたら天才だと思っていたが、こういったワイルドでたくましい女性、真剣な役でも素晴らしい演技を見せてくれる。イギリス英語のエミリー・ブラントが、田舎町のアメリカ英語の訛りを見事に話しているのには驚きを隠せなかった。
映画界で存在感を築き上げ、欠かせない顔ぶれとなっているこの二人のこれからの益々の活躍が楽しみだ。
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