Thursday, January 22, 2015

The Imitation Game (邦題:イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密、日本公開予定2015年3月13日)


遅ばせながら、来る2月に行われるアカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞など8部門にノミネートされた『The Imitation Game (邦題:イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密を観てきた。


 

本作品を監督したノルウェー出身の映画監督、Morten Tyldum(モルテン・ティルデゥム)にとっては初めての英語作品にして、華々しいハリウッドデビューとなった。

この作品は、Alan Turing(アラン・チューリング)という天才数学者、暗号解読者の伝記映画であり、第2次世界大戦中にドイツ海軍を攻略するために、イギリス政府が着目したナチス・ドイツの『エニグマ』という暗号機を利用した通信を解読するまでの道のりを描いた作品である。



チューリング博士はコンピュータ科学、あるいは人工知能の父とも言われ、コンピュータ好き、エンジニアなどでは知らない人はいないのではないだろうか。彼はコンピュータは人間と同様にとは言えなくとも、“考える”ことができると信じていた。




ストーリーを簡単に紹介すると...

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時は1939年、第2次世界大戦中、ドイツ軍は欧州各国をすさまじい勢いで攻め、イギリス軍は厳しい戦いを強いられている。イギリス政府はドイツ軍の通信を行う暗号機、『エニグマ』の解読が、ドイツ軍の勢いを抑制し、戦争で勝利を抑えるために必要不可欠だと考える。



当初は類まれた言語学者による解読を進めていたが、数学による解読にシフトしていく。その秘密部隊Hut 8を指揮したのが、Alan Turing(アラン・チューリング)だ。

彼らはイギリス郊外のブレッチリー・パークに部隊を構え、刻々と悪化していく戦争の状況なかで、時間と闘いながら、解読に向けて試行錯誤する。



チューリング博士は、機械に勝つには機械しかないと考え、仲間や政府上層部の反感を買いながらも解読できる装置を作ろうとする。

だが、チューリング博士は様々な逆風に遭遇することとなる。



これまで絶対に不可能とされていたエニグマの解読に果たしてチューリング博士率いる部隊は成功できるのか?

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ここからはストーリー後半を書くので、ネタバレ注意


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遂に1939年12月、チューリング博士のチームはエニグマのインジケーターシステムの基本部分を解明することに成功する。



しかし、暗号解読という機密事項を扱う仕事だったゆえに、この発見、解読の業績は秘密とされたため、彼らは戦争を短縮し、多くの命を救った事実に大きく貢献しながらも、英雄扱いされることはなかった。

1945年、戦時中の功績により、OBE(大英帝国勲章)を授与されたが、近しい友人や家族すらそのことを知らなかった。



それどころか、その後、チューリング博士は同性愛者として罰せられ、政府から厳しい仕打ちを受ける。(当時のイギリスでは同性愛は違法であった。) 彼の功績を知らない世間からも公然と辱めを受けることとなる。

彼は、入獄を避けるために、女性ホルモンを注入するホルモン療法を強要され、それの苦しみからか、41歳の時に自殺した。

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イギリス政府はこの特別組織と極秘任務について、50年以上も秘密としていた。


チューリング博士の罪(=同性愛)については、その後、2012年に英国貴族院に正式な恩赦の法案が提出され、2013年にようやくエリザベス2世女王の名をもって正式に恩赦が発行され、キャメロン首相も改めてチューリング博士の功績を称える声明を発表した。




チューリング博士を演じたのはBenedict Cumberbatch(ベネディクト・カンバ―バッチ)、博士と一時期婚約をしていた同僚のJoan Clarke(ジョアン・クラーク)をKeira Knightley(キーラ・ナイトレイ)が演じた。言うまでもないが、ともにイギリス映画界のトップスターである。どちらもそれぞれ主演男優賞として、そして助演女優賞としてアカデミー賞にノミネートされている。ベネディクト・カンバ―バッチの演技は非常に素晴らしく、感情移入してしまうほどだったが、キーラ・ナイトレイに関しては、演技自体はまぁ普通というのが個人的な感想だ。ただ、役柄は素晴らしかった。チューリング博士をリスペクトし、支え、全てを受け入れ、見守った女性。




ジョン・ナッシュ博士の伝記映画『Beautiful Mind(邦題:ビューティフル・マインド)』にも、スティーヴン・ホーキング博士『The Theory of Everything(邦題:博士と彼女のセオリー)』にも、共通して言えることだが、天才というか、奇跡を起こす男の傍には必ず賢くて素敵な女性がいるものだ。


3月には日本でも公開される予定になっているので、是非観ていただきたい。





Thursday, January 15, 2015

Oscar Nominees 2015(第87回アカデミー賞 ノミニー)

アメリカ時間の15日早朝、遂に第87回アカデミー賞ノミネート作品が発表された。

発表されてまもなく、ざっとノミニ―に目を通した印象としては、どの主要カテゴリーを観ても、「あれ、あの作品は?なんか足りなくない?」という感じ。



まず、『Gone Girl(邦題:ゴーン・ガール)』。作品賞、監督賞、脚本賞の3部門でノミネートが期待できるかと思ったが、どこの部門にも候補として入らなかった。

そして『Interstellar(邦題:インターステラー)』。こちらも作品賞にも監督賞にも残念ながらノミネートされることはなかった。

両作品ともノミネートされなかったことには首を傾げてしまうが、一方でノミネートされている作品が納得できないわけでもない。むしろ一つ一つの作品を見てみると納得できる。実際にノミネートされた8作品のどれかが抜けてても、同じことを思ったであろう。




ちなみに、Best Picture Nominations(作品賞ノミネート作品)は以下のとおり。

『The Lego Movie(邦題:レゴ・ムービー)』も大ヒットしたが、長編アニメ部門にノミネートされることはなかった。これも多くの人が驚いたのではないだろうか。

『Selma(邦題:セルマ)』もゴールデン・グローブ賞では評価が高かったが、アカデミー賞でのノミネーションは作品賞とオリジナル楽曲賞のみに留まった。


俳優、女優では、『Big Eyes(邦題:ビッグ・アイズ)』 のAmy Adams(エイミー・アダムズ)がゴールデン・グローブ賞に続き、主演女優賞にノミネートされてるかと思ったが、意外にもされなかった。“意外”というのは彼女の演技の評価が高かったというよりは、アカデミー会員が好きな女優なのに、されなかったことが意外という意味である。

あとは、Nightcrawler(邦題:未定)』で不気味な演技を披露したJake Gyllenhaal(ジェイク・ジレンホール)も主演男優賞にはノミネートされず。『The Most Violent Year(邦題:未定)』のJessica Chastain(ジェシカ・チャステイン)も助演女優賞にノミネートされなかった。

それぞれの部門におけるノミニーのリストはこちら!
http://oscar.go.com/nominees


ゴールデングローブ賞で勝ち組となった『Boyhood(邦題:6才のボクが、大人になるまで。)』と『Birdman(邦題:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡))』がアカデミー賞でも多くの部門でノミネートされた。

日本作品では、2013年に公開されたスタジオジブリの高畑勲監督の『The Tale of Princess Kaguya(原題:かぐや姫の物語)』が長編アニメーション部門でノミネートされ、話題となっている。

アカデミー賞本番はアメリカ時間の2月22日!



Monday, January 12, 2015

The Golden Globe Awards 2015 (第72回ゴールデン・グローブ賞)

みなさま、遅ばせながら、明けましておめでとうございます。
本年どうぞよろしくお願いいたします。

さて、昨年末から仕事が変わったこともあり、なかなか時間がとれず、更新ができていないので、いつもブログの更新を楽しみにしてくださっている方には申し訳ない気持ちでいっぱいです。

そして何より、映画のことを書くことが大好きな私にとっては、書く時間がとれないことが少しストレスなのですが、今年も細々と書いていきたいと思いますので、引き続きご愛読いただければ嬉しいです。




さて、年が明け、賞レースが始まりましたね!

アメリカ時間の昨日、ビハリーヒルズにて第72回ゴールデングロープ賞が開催されました。モーションピクチャー(映画)部門とテレビ部門、両方のアワードを対象としていますが、本ブログでは映画部門のみにフォーカスしてお届けします。

ちなみに、ゴールデングローブ賞の概要や選考基準などは、昨年の記事The Golden Globe Awards 2014(第71回ゴールデン・グローブ賞)をどうぞご参考に...


さて、映画部門では、『Birdman(邦題:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡))』と Boyhood(邦題:6才のボクが、大人になるまで。)』がそれぞれ3冠で勝ち組みとなりました。



以下、ノミネート作品と受賞作品を一挙公開!

★Best Drama(最優秀ドラマ賞)
Foxcatcher(邦題:フォックスキャッチャー)』
Selma(邦題:セルマ)』

★Best Comedy(最優秀コメディ賞)
WINNER: The Grand Budapest Hotel(邦題:グランド・ブダペスト・ホテル)』
Birdman(邦題:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡))』
Into the Woods(邦題:インテゥ・ザ・ウッズ)』
Pride(邦題:パレードへようこそ)』
St. Vincent(邦題:未定)』

★Best Director(監督賞)
WINNER: Richard Linklater(リチャード・リンクレイタ Boyhood(邦題:6才のボクが、大人になるまで。)』
Wes Anderson(ウェス・アンダーソン),  The Grand Budapest Hotel(邦題:グランド・ブダペスト・ホテル)』
Ava Duvernay(エヴァ・デュヴルネ), Selma(邦題:セルマ)』
David Fincher(デヴィット・フィンチャ, Gone Girl(邦題:ゴーン・ガール)』
Alejandro Gonzalez Inarritu(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥー), Birdman(邦題:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡))』

★Best Actress in Drama(ドラマ部門主演女優賞)
WINNER: Julianne Moore(ジュリアン・ムーア), Still Alice(邦題:アリスのままで)』
Jennifer Aniston(ジェニファー・アニストン), Cake(邦題:未定)』
Felicity Jones(フェリシティ・ジョーンズ)The Theory of Everything(邦題:博士と彼女のセオリー)』
Rosamund Pike(ロザムンド・パイク),  Gone Girl(邦題:ゴーン・ガール)』
Reese Witherspoon(リース・ウィザースプーン), Wild(邦題:未定)』

Best Actor in Drama(ドラマ部門主演男優賞)
WINNER: Eddie Redmayne(エディ・レッドメイン),  The Theory of Everything(邦題:博士と彼女のセオリー)』
Steve Carell(スティーヴ・カレル), Foxcatcher(邦題:フォックスキャッチャー)』
Jake Gyllenhaal(ジェイク・ジレンホール), Nightcrawler(邦題:未定)』
David Oyelowo(デヴィッド・オイェロウォー), Selma(邦題:セルマ)』

★Best Actress in a Musical or Comedy(コメディ部門主演女優賞)
WINNER: Amy Adams(エイミー・アダムズ), Big Eyes(邦題:ビッグ・アイズ)』
Emily Blunt(エミリー・ブラント), Into the Woods(邦題:インテゥ・ザ・ウッズ)』
Helen Mirren(ヘレン・ミレン), The Hundred-Foot Journey(邦題:マダム・マロリーと魔法のスパイス)』
Julianne Moore(ジュリアン・ムーア), Map to the Stars(邦題:マップ・トゥ・ザ・スターズ)』
Quvenhane Wallis(クァヴェンジャネ・ウォレス), Annie(邦題:アニー)』

Best Actor in a Musical or Comedy(コメディ部門主演男優賞)
WINNER: Michael Keaton(マイケル・キートン)Birdman(邦題:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡))』
Ralph Finnes(レイフ・ファインズ), The Grand Budapest Hotel(邦題:グランド・ブダペスト・ホテル)』
Bill Murray(ビル・マーレイ), St. Vicent(邦題:未定)』
Joaquin Phoenix(ホアキン・フェニクス), Inherent Vice(邦題:未定)』
Christoph Waltz(クリストフ・ヴァルツ),  Big Eyes(邦題:ビッグ・アイズ)』

★Best Supporting Actress(助演女優賞)
WINNER: Patricia Arquette(パトリシア・アークエット) Boyhood(邦題:6才のボクが、大人になるまで。)』
Jessica Chastain(ジェシカ・チャステイン), A Most Violent Year(邦題:未定)』
Emma Stone(エマ・ストーン), Birdman(邦題:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡))』
Meryl Streep(メリル・ストリープ), Into the Woods(邦題:インテゥ・ザ・ウッズ)』

★Best Supporting Actor(助演男優賞)
WINNER: J.K. SimmonsJ.K.シモンズ), Whiplash(邦題:セッション)』
Robert Duvall(ロバート・デュヴァル), The Judge(邦題:ジャッジ 裁かれる判事)』
Edward Norton(エドワード・ノートン), Birdman(邦題:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡))』
Mark Ruffalo(マーク・ラファロ),  Foxcatcher(邦題:フォックスキャッチャー)』

★Best Screenplay(脚本賞)
WINNER: Alejandro Gonzalez Inarritu(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥー), Nicholas Giacobone(ニコラス・ジャコボーン), Alexander Dinelaris(アレクサンダー・ディネラリス)and Armando Bo(アルマンド・ボー)Birdman(邦題:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡))』
Wes Anderson(ウェス・アンダーソン)『The Grand Budapest Hotel(邦題:グランド・ブダペスト・ホテル)』
Gillian Flynn(ギリアン・フリン)Gone Girl(邦題:ゴーン・ガール)』
Richard Linklater(リチャード・リンクレイタ Boyhood(邦題:6才のボクが、大人になるまで。)』

Best Original Song(主題歌賞)
WINNER: Glory from Selma, Music and lyrics by John Legend and Common
"Big Eyes" from Big Eyes, Music and lyrics by Lana Del Rey
"Mercy Is" from Noah, Music and lyrics by Patti Smith and Lenny Kaye
"Opportunity" from Annie, Music and lyrics by Greg Kurstin, Sia Furler and Will Gluck
"Yellow Flicker Beat" from The Hunger Games Mockingjay Part 1, Music and lyrics by Lorde

Best Score(作曲賞)
Birdman(邦題:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡))』
Interstellar(邦題:インターステラー)』


監督賞、ドラマ、コメディそれぞれの作品賞は勿論のこと、個人的に最もドキドキしながら聞いていた賞は、主演女優賞と主題歌賞。ドラマ部門の主演女優賞は誰が選ばれても納得できるくらい、5人のノミニーの演技力は定評だ。主題歌賞はLana Del ReyとLordeの一騎打ちになると思っていたので、意外な結果となった。

脚本賞、助演女優賞もさぞかし接戦だったことだろう。

また、主演男優賞、主演女優賞の双方にノミネートされたのは、 The Theory of Everything(邦題:博士と彼女のセオリー)』のみ。本当に2人の演技は素晴らしかった。まだ観ていない方には是非観てもらいたい。



ゴールデングローブ賞では作曲賞のみのノミネートで終わってしまった『Interstellar(邦題:インターステラー)』、きっとアカデミー賞ではもっと脚光を浴びるのではないだろうか。

今月15日に全24部門のノミニが発表されるので、注目だ。



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余談ですが、アカデミー賞当日までに、まだ観ていないこちら5作品たちを観に行きたいと思っています!
Big Eyes(邦題:ビッグ・アイズ)』
Foxcatcher(邦題:フォックスキャッチャー)』
Wild(邦題:未定)』
Selma(邦題:セルマ)』
 A Most Violent Year(邦題:未定)』


そして、『Taken 3(96時間/レクイエム)』とAmerican Sniper(邦題:アメリカン・スナイパー)』も観に行きたいので、しばらくは映画漬けの週末が続きそうです!