Friday, June 7, 2013

Dead Man Walking (邦題:デットマン・ウォーキング)


タイトルを読むと一瞬「死人が歩いている?ゾンビもの?!」と思う人も多いのではないだろうか。しかし、実際にはゾンビという架空の化け物を描いたものとは全く異なり、むしろ人間の生々しい感情を描写しているフィルムだ。

本作品『Dead Man Walking (邦題:デットマン・ウォーキング)』は1995年のハリウッド映画。法廷映画というジャンルが確立されているかは定かではないが、簡単にいうと、法廷という場を舞台に、罪、命の重さ、善、悪などを描いている作品である。スリル、サスペンス、多少のホラー的要素に加え、ヒューマンドラマが含まれるものが多い。人種差別を取り上げている作品も少なくない。

代表的な法廷映画といえば、以下のようなフィルムなどが挙げられる。
12 Angry Men (1957)(邦題:十二人の怒れる男)』
The Verdict (1982)(邦題:評決)』
A Few Good Men (1992)(邦題:ア・フュー・グッドメン)』
*『The Pelican Brief (1993)(邦題:ペリカン文書)』
*『The Firm (1993)(邦題:ザ・ファーム 法律事務所)』
*『The Client (1994)(邦題:依頼人)』
Murder in the First (1995)(邦題:告発)』
*『A Time to Kill (1996)(邦題:評決のとき)』
Sleepers (1996)(邦題:スリーパーズ)』
*『The Rainmaker (1997)(邦題:レインメーカー)』
Double Jeopardy (1999)(邦題:ダブル・ジョパディー)
The Green Mile (1999)(邦題:グリーン・マイル)』
High Crimes (2002)(邦題:ハイ・クライムズ)
*『The Runaway Jury (2003)(邦題:ニューオーリンズ・トライアル)』
(*印はジョン・グリシャムの小説が原作となったフィルム)

少し上述した法廷ものと毛色が違うものでも、以下のようなフィルムがある。
Kramer vs. Kramer (1979)(邦題:クレイマー・クレイマー)』
I am Sam (2001)(邦題:アイ・アム・サム)』
Changeling (2008)(邦題:チェンジリング)』

法廷映画は私が昔から大好きな映画ジャンルの一つだ。

その理由の源になるのは、間違いなく名作家ジョン・グリシャムの存在である。

父がジョン・グリシャムの本が大好きだったことから、私もその影響を受け、比較的幼い頃からジョン・グリシャムの本をいくつか読んできた。

彼の本の舞台は殆どアメリカ南部。特にニューオーリンズ、アトランタが多い。この2つの都市で幼少時代を過ごした私にとっては故郷だ。彼の小説や彼の小説が原作となっている映画に魅かれるのはこのためかもしれない。小説を読みながらその場面場面を思い描いたり、映画を観ながら雰囲気を懐かしんだりすることが楽しいのだ。また、彼の小説や原作映画を観て育ったせいか、中学校くらいまでは本気で弁護士になりたいと思っていたくらいだ。

そして、法廷映画に頻繁に出ている俳優たちにも何故だかすごく魅かれるのだ。知的だけど感情のある人物像で描かれているケースが多いからだろうか。

例えば、スーザン・サランドン、アシュリー・ジャッド、ジュリア・ロバート、ショーン・ペン、トム・クルーズ、モーガンフリーマン、ダスティン・ホフマン、トミー・リー・ジョーンズなど。


さて、前置きがとても長くなってしまったが、この映画のテーマ。大きく2つあると考えている。一つは許し。二つ目は、死刑制度の是非を問うこと。
ちなみに、この物語は実在した死刑廃止論者である修道女ヘレン・プレジャンのノン・フィクション作品が映画化されたものである。




舞台はルイジアナ州。ショーン・ペン演じるマシュー・ポンスレットは若いカップルへの強姦および殺人で起訴されている罪人である。彼は物語が始まった時点で既に死刑囚となっているが、無罪を主張している。しかし、これが認められず,死刑執行が決定する。シスターヘレンはとあるきっかけで彼と出会い、死刑執行までの間、彼のスピリチュアルカウンセラーとなり、彼に寄り添う。シスターヘレンたちは最後まで死刑執行を回避しようと手をうつが、これは叶わず、シスターヘレンは被害者側の家族にも痛烈に批判をされる。どちらの心情も理解できるヘレンは、マシューにも被害者の家族にも心の平和を取り戻してもらおうと賢明に努力をする。死刑囚のマシューが実際にこの犯罪を犯したのか否かは死刑執行の前日まで明かされない。この映画は基本的には死刑廃止論の立場で描かれているが、被害者の家族など死刑制度に賛成する一派の意見も描かれている。

名俳優と名女優であるショーン・ペンとスーザン・サランドンの演技がとても上手いので、死刑囚とはいえ、シスターヘレン同様にマシューに感情移入してしまう人がいるのではないだろうか。死刑制度賛成派の私でさえも、死刑制度の是非について改めて考え直すきっかけとなったくらいだ。それだけ、死刑囚も(人にもよるが)心の通った人間なのだ、と思わせられる、そんな映画だ。

テーマが重く、非常に考えさせられる映画だが、それだけにすごく見応えがある。

そして、物語とは全く関係ないが、この頃のショーン・ペンがまだ若く、すごくかっこいい。

監督と脚本を務めたティム・ロビンズ(俳優としても有名ですが)はヘレン役のスーザン・サランドンのかつてのロングタイムパートナーである。サランドンはこの作品でアカデミー主演女優賞を受賞した。ティム・ロビンズは監督賞で、ショーンは主演男優賞でそれぞれノミネートされたものの、二人ともこの作品での受賞を逃した。

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